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はしがき 
―本書のねらいと構成―

 グローバリゼーションが問われています。富を生み,豊かさを広げていくはずだったグローバリゼーションは,金融の肥大化とその破綻,広がる貧困と格差拡大などによって,その光と影とを交錯させています。本書は,グローバリゼーションを理解するという大きなねらいのもとにつくられました。目次をご覧いただければわかるように,まず貿易,投資,金融,開発といった,世界経済論として学ぶべき伝統的で基本的な内容がふまえられています。加えて,それがグローバリゼーションを理解するために必要な理論,歴史的な背景,喫緊のグローバル・イシューについて学ぶための事項を盛り込んだ配列でもあることに気づいていただけると思います。

 本書は,大学1,2年で学ぶ世界経済論,国際経済学,外国地域経済論,各種の国際政策,国際関係といった科目やゼミなどの教科書として,専門科目の基礎を提供するレベルに設定されています。本書を参考に学ぶことで,どのような観点から,どのように調査し,そしてどのように考えていったらよいのか,基本的な姿勢を身につけてほしいというのが,実は一番のねらいになっています。そのために,必要な基礎知識は何か,取り組むべき基礎理論は何か,といったことを,編者による会合では長時間にわたって何回か話し合いました。じっくり学ぶべき内容をコンパクトにまとめるというやっかいな課題に,各章の担当者が実にうまく対処してくださったことで,このねらいに対応できたものと自負しています。執筆者はこれまでの版から大きく入れ替わり,各分野の中堅を中心に,実績のあるベテランから気鋭の研究者まで,それぞれの研究成果をもとにバランスのとれた執筆を心がけてもらいました。

 つい先日、ながらく本書のコーディネイトにあたられてきた先生の退任記念の研究報告を聞く機会がありました。教育実践とのかかわりで,本書のねらいと成立事情について,さらに絞り込んだ説明を聞きましたので,紹介しておきましょう。本書のコンセプトは,「学部2年生が,現代世界経済を学ぶための教科書」でした。ここで,「学部2年生」とはどういうことでしょうか。たとえば経済学部などの学生が世界経済論や国際経済学を学ぶための教科書ならたくさんありますが,これらはある程度の知識を前提にしており,学部3,4年生向けというべきものが多いようです。また,初歩的な知識なしに現代世界経済のある側面をとらえてわかりやすく解説しようという入門書も,適当なものをいくつか思いつきます。そういった入門書を読んだ後に学ぶことができ,学部3,4年生向けの教科書を学ぶための前提知識を体系的に得ることができる教科書。これが,類書と異なる本書のポジショニングでした。こういった教科書は,必要なのにどこにもない。それなら,つくろうではないか。こうして,1987年,本書の初版が刊行されました。

 幸いなことに数年ごとの改訂を経て,本書はとうとうVer.5となりました。この間,改訂のたびに,小さな「技術革新」が積み上げられて使いやすくなり,スタイルを確立してきたといえましょう。本書のスタイルがいつの間にか普及したためでしょうか,今ではかえって珍しくないというべきかもしれません。「現代」を学ぶために必要な項目の選択と厳選された章立て,最先端の課題や研究動向を伝えて好奇心を刺激する「コラム」,さらなる学習のための問いと文献紹介,そして調査のための「e-references」などがそれです。

 本書は14章で組み立てられており,1章を2回に分けて学べば,1年間の講義(通年科目)向けに最適な分量となっています。また,各章ごとに内容を選ぶとこで,半年で学ぶ講義(半期科目)の教科書としても対応可能です。ユーザーへの各種情報提供などによって,学びやすく,教えやすい,したがって息の長い教科書として使っていただけるような工夫もしてきました。

 ここまでは本書の教科書としての,いわば変わらぬ性格をご説明しました。逆にVer.5で変わったこととして,執筆者と編者の構成があります。とくに編者は一気に総入れ替えとなり,世代交代しました。Ver.5の編者は,初版ではユーザーであり,途中から執筆者になるなどしてきました。ユーザーとしての,また執筆者としての経験を編集に生かすよう心がけましたが,それがうまくいっているかどうかは,本書の新しいユーザーである先生方や学生のみなさん、そして一般読者の判断をまつしかありません。

 本書はこれまで,ユーザーの反応を編者と執筆者が次のバージョンに生かすことで,次々と版を重ねてきました。Ver.5もまた,新しいユーザーに向けてお届けするのですが,これまでの編者と執筆者のみなさんにも,心からの「お疲れ様」という言葉とともに本書をお届けしたいと思います。最後になりますが,至らぬ編者を大いに助けてくれた編集部の茅根恭子さんの奮闘なしに本書はできあがりませんでした。多くの方々への感謝とともに,本書をお届けします。

 2010年3月

編 者

執筆分担(*は編者)

  • 第1章 編者
  • 第2章 郭 洋春 (立教大学経済学部教授)
  • 第3章 中本 悟 (大阪市立大学大学院創造都市研究科教授)
  • 第4章 田中 宏 (立命館大学経済学部教授)
  • 第5章 石田 修 (九州大学大学院経済学研究院准教授)
  • 第6章 板木 雅彦 (立命館大学国際関係学部教授)
  • 第7章 毛利 良一 (日本福祉大学[通信制]大学院国際社会開発研究科教授)
  • 第8章 佐藤 秀夫 (東北大学大学院経済学研究科教授)
  • 第9章 鳴瀬 成洋 (神奈川大学経済学部教授)
  • 第10章 小野塚 佳光 (同志社大学経済学部教授)
  • 第11章 妹尾 裕彦 (千葉大学教育学部准教授)
  • 第12章 千葉 典 (神戸市外国語大学外国語学部准教授)
  • 第13章 山川 俊和 (一橋大学大学院経済学研究科特任講師)
  • 第14章 櫻井 公人(立教大学経済学部教授)

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