第14章:Question
- 【1】
「労働力を呼び寄せたつもりだったが、やって来たのは人間だった」とはどういう意味か、説明してみよう。
- 【2】
労働力需要が減少するので外国人労働者に帰国を促し入国を厳しくすると、彼らはどのように反応しただろうか。このケースのどこが「逆説」なのか、考えてみよう。
- 【3】
19世紀のグローバリゼーションが一度途絶えたことから、何がわかるだろうか。今日のグローバリゼーションを考察する際にどのようなヒントが得られるのか考えてみよう。
第14章:Answer
- 【1】
西ドイツの外国人労働者受け入れ政策は,当初「ローテーション・システム」として構想され,外国人労働者はたとえば2年間の労働の後に帰国し,その後は別の労働者がやってきて短期間で入れ替わっていく想定だった。いわば労働力を時間単位で購入し,必要な時に必要なだけ利用できるはずだったが,彼らは短期間では帰国しようとせず,新規の募集が停止されたり不況で失業したりしても帰国しなかった。労働者個人が経済的要因に反応して行動するだろうという想定が崩れたのだともいえる。その理由は,外国で働くことを決めた事情として賃金以外のものがありうること,ネットワークを介した連鎖移民状況がありうること,再入国が困難になると家族を呼び寄せてかえって定着の傾向を強めうることなどである。総じて個人の状況以上にたとえば家族といった社会的ネットワークのなかで行動する外国人労働者を,労働力商品としての側面でとらえすぎたことで,その行動をとらえることができなかった事情が表現されたものといえる。
- 【2】
労働力の新規導入を停止し,帰国のインセンティブをつける政策によっても,新規の労働力流入は減少せず,多くの労働者たちは帰国を選択しなかった。これは,政策目標の想定に反していると見ることができるため、「逆説」といえる。外国人労働者たちは一度国外に出ると再入国が困難になったことから,家族を呼び寄せて定着をはかるようになった。逆に,何度でも容易に再入国できるのであれば,何度でも帰国するという往復行動をとるようになり,定着を避けることができる。定着を避けるには,厳しい締め出し型の政策よりも,場合によってはこちらのほうが有効とさえいいうるのである。
- 【3】
グローバリゼーションは不可避であって,一度進展すれば逆転することのない現象だといった類の言説が世間にあふれた。だが,歴史を振り返ることにより,グローバリゼーションがその進展の後に逆転して終息した19世紀から20世紀初頭までの事情を確認できる。ここから,20世紀末から21世紀初頭にかけてのグローバリゼーションを,不可避で,逆転しない現象だと決めつけないほうがよいことがわかる。そのようにグローバリゼーションを自然現象のように見ることは,グローバリゼーションをめぐる論争を脱政治化させる効果をともなう。その意味で,グローバリゼーションの不可避論はグローバリゼーション推進派の議論であることがわかり,グローバリゼーションをめぐる論争から,グローバリゼーションをどう見るべきかについてのヒントも得られたことになる。